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デジカメ軍の野望

 最近カメラの新製品が少ない。AF一眼レフが登場した当時は、矢継ぎ早に新製品が発表されたのに、このところずいぶんスローペースである。その理由をよく考えてみると、まあAF一眼レフの性能も落ち着いてきたという見方ができる。
 しかし去年はAPSカメラの開発にとられ、今年はデジカメの開発に追われているという見方もできる。カメラメーカーはそれほど大きくないから、何か新製品を出そうとすると、ほかのものの開発は遅れてしまうのだ。サンダーは何でも新製品に飛びつきそうな人相をしているが、実は超銀塩派だからそう簡単にデジタルには行かない。とはいえここまでいっぱい出てくると考えない訳には行かない。ポンカメ(日本カメラ)のカメラ年鑑を見ているといつのまにかずらっとデジカメが並んでいる。
 写真的には超銀塩派だがカメラに関してはプロカメラオタクだから気になってしょうがないのだ。どうも知らないカメラがあるのはムシが好かない。仕事柄デジカメを見たり触ったりする機会は度々あるが、いまだにワープロを使っているサンダーとしては、なかなかパソコンにいけない。原稿を書くだけならワープロで十分だし、原稿書いて写真を撮っているとそれ以上暇がないのが実態だからだ。またパソコンは変化が早くて選びにくいという理由もある。マックがいいのかウィンドウズがいいのか最初は決めかねるものがある。自分の仲間は圧倒的にマックが多いが、数の論理でいうとウィンドウズ系が圧倒しているらしい。さてどうしたものか。こういう悩みを数年間続けているが、結局ワープロのキーをたたいているだけで満足してしまう。原稿を書く以外にキーボードを触るのはまっぴらなのだ。これは職業カメラマンが仕事以外でカメラを見るのもイヤになってしまう現象に似ている。サンダーは原稿書くのが仕事。写真は趣味ということにしているから、キーボードを触るのはイヤでも、仕事でいくら写真を撮っても、カメラいじりはいっこうに嫌にならずに済んでいる。それから、サンダーの個人的な問題として、パソコンを買う金があるとカメラを買ってしまうという大きな欠点がある。とにかくスキモノなのだ。ライカを買うのに20万や30万円かかっても、さほど高いとは感じないが、パソコン買うのに40万円かかると聞くと「う〜ん・・・・・高い!」結局人間というのは好きなものには金に糸目をつけない(金がある限り)が、必要だと思うもの、好きでもないのに買わなければいけないものは高く感じるものらしい。つまりパソコンが欲しいわけではないが、画像処理には興味がある。経験してみたいと思う。かといってそれほど積極的にはならない。もう一つ決定的に欲しい理由が見つからないのだ。超銀塩派としては、合成写真が大嫌いである。写真のよさは無限大に続く時空の中を切り取ることで、イメージとしての小宇宙を作りあげることにある。実物のイメージと写真として切り取ったイメージが、たとえ別世界であっても、現実を切り取り、レンズのパースペクティブやボケ、フィルムの特性をいかすことで、確かに実在した世界を自分だけの小宇宙に作り替える楽しさが写真なのだ。ところが合成写真になると、どこかに消しさることのできない写真の証拠性はまったくなくなってしまう。つまりカメラマンとしての現実を切り取る目を全く必要としない別次元の代物になってしまう。写真のふりをしていても写真とは別次元のしろものなのだ。
 超銀塩派としてはそのように考えているわけだが、サンダーのこだわりは全くやったことの無い世界を完全には否定できないこと。ぼろいカメラからいいカメラまで何でも使ってこそ、いいカメラのよさがわかるが、いいカメラしか使ったことの無い人は、よさを本当に理解することはできないのだ。そのことをイヤというほど体験しているサンダーとしては、デジカメやコンピューターによる画像処理を経験しないうちに否定はできない。とにかくやってみなくてはいけないテーマの一つである事は確かだ。というところで話はデジカメに戻る。ここ数年デジカメや画像処理について興味はあるが踏み切れないでいたサンダーだが、学研が出しているビデオカメラ雑誌[ビデオCAPA]が今度の4月号から[デジタルCAPA]に生まれ変わることになった。デジカメ、デジタルビデオカメラ、画像処理などを対象とした専門誌になる予定である。「とりいちゃん、トリイちゃん。サンダーもそのうちデジキャパ参加してあげるよ。妖しいおねえちゃんの写真とってあげるよ」
 トリイとはデジキャパ編集部員である。デジカメをいじってみたいと思うサンダーは、自分の財布を開ける事なくデジカメを使う方法を考えた。まだ躊躇しているパソコン導入に必然性を与えるためでもある。しかしこういう一言がおうおうにして墓穴を掘る。トリイに冗談半分気楽にいってしまった直後、デジカメ編集長のスドーさんが飛んできた。「サンダーさんデジキャパ書いてくれるんだって。さっそく創刊号から書いてよ」おりょりょ。そのうち、ある程度自分なりに体験してみてからと思っていたのにいきなり始まってしまった。「本気で何にもワカラナイ立場の人間としてでいいなら書きますよ」
 とっ、サンダー。
 商談成立である。とりあえずタイトルは決まった。第一回は[零からのスタート]である。でっちあげではなく本当に零からのスタートだから洒落にならない。タイトルは明快だがとりあえず何をするべい。
 ポンカメの年鑑にこれだけデジカメが並んでいるということは、きっとヨドバシカメラ(東京で一番ビックなカメラ店。ひょっとしたら世界一のカメラ屋かもしれない)には、すでにデジカメブースができているに違いない。これはプロカメラオタクとしてのカンだ。ヨドバシカメラは乱暴な商売をしているように見えるが、じつはかなり現実的な商売をする会社だ。リスクが大きそうなものには手を出さないし、あんだけ儲かっているはずなのに支店の拡張は実にスローペースだ。つまり時流をよく観察し堅実な商売をする会社なのだ。ちなみにシャチョーは浪花の商人らしい。ライカのコレクターでもある。
 そこで第一回のテーマはデジカメの実情調査。ヨドバシカメラのデジカメコーナーを取材することに決まった。最近中古カメラ屋には行っても、新品を売るカメラ屋にはめったに行かないのでホントにデジカメコーナーがあるのかどうかもわからない。
 とりあえず編集担当者が夜ヨドバシカメラに取材の申し込みをする。すぐにOKがでる。ということはデジカメブースが実在するということだ。
 約束の日、デジキャパ編集部員練馬のヨッシーと、状況撮影部隊のマッチーカメラマンの3人でヨドバシに出かける。サンダーは交通渋滞に巻き込まれやや遅刻した。ごめんなさい。先にデジカメブースを偵察していたヨッシーに連れられ現場到着。残念ながら店のメイン地帯ではなく、通路を改造した端っこにそのブースは存在した。以前はゲームソフトが売られていた場所だ。どうみてもまだまだ出店扱いだが、そのうち店の中枢部に引っ越すに違いない?
 まあ実際にデジカメがコンパクトカメラの代わりに売れるようになるには、まだ数年の歳月が必要かもしれないが、パソコンの周辺機器、手軽な画像入力装置としての認知度はかなり上がっている。
 デジカメブースでいろいろカメラを触ったり、店員に話を聞いたりする。
 その中で気になる情報は、パソコン買ってそのままデジカメも買って帰る人が最近増えていること。サンダーの個人的かつ手前味噌的分析では、パソコンとデジカメを同時に購入する人種はきっとカメラマニアに違いない。サンダー同様、デジカメ使ってみたい。でもそのためにはパソコンも始めなければならない。とっ、考えている人種がいるということだ。まあ少なくともカメラファンの中に、デジタル技術に興味を持っている人はけっこう増えたはずだ。
 サンダーがデジカメに興味を持っているもう一つの理由は、最近若年層のカメラファンが伸び悩んでいるという事実だ。カメラ雑誌の読者の高年齢化が進んでいるということである。その理由を分析していくとテレビゲームの浸透がまず上げられる。
 サンダーだってけっこうテレビゲームで遊んでいるから否定的な意見をいうわけにはいかないが、どうもテレビゲームをやっていると外に出て何かしようという気にはならなくなる。もともと写真は孤独な遊び、たまに仲間と写真を撮りに行くことはあっても、基本的には一人遊びの世界なのだ。
 しかし原因はテレビゲームだけではない。敵はパソコンなのだ。紙と画面の違いはあっても、写真もパソコンも二次元オタクという要素は代わらない。しかもどちらもお金をかければキリがない世界だから、ワカモノとしてはカメラを買ったらパソコン買えないし、パソコン買ったらカメラを買えないのだ。しかしパソコン買ったらデジカメ買う人は増えるに違いない。
 つまり新時代のカメラ入門はデジカメからという考え方は成り立つ。デジカメもどんどん進歩するだろうから、もっと実用的になるはずだ。しかし画質的にデジカメが銀塩に完全に追いつくことは不可能だから、よりシビアにデジカメ遊びをしようと思ったら、銀塩フィルムからスキャナーで読み込むというコースにたどり着く。
 つまり現在は写真をやっている人が画像処理に手を出すという流れが、画像処理から写真へという時代が来ると思うのだ。
 サンダーは超銀塩派だから、デジカメもおもしろいとは思うが、銀塩カメラの信者をより増やしたいと思っている。これからの写真がデジカメから銀塩へというコースに代わるなら、超銀塩派はデジタルの世界に布教活動の拠点を設けなければいけないということだ。デジカメもいいけど写真もいいよ。というわけなのだ。
 まあそういった理由でデジタル世界にサンダーもついに参入。これから一生懸命勉強していくから応援して欲しい。

サンダー通信

 97年3月20日前後に発売される予定の「サンダーのお仕事は学研ムックシリーズ」の18番目に露出補正の攻略という本がある。サンダーはそのうちの約1/3ぐらいを担当。ポートレート編を中心に執筆している。ただしトータルコーディネートもサンダー。全体の構成はサンダーの発案によるもの。露出補正というテーマは時代によって大きく変化している。多分割測光という測光方式が開発され、自動露出補正機能の性能が良くなることにより、露出補正は以前より難しくなってきた。昔だったら逆光はプラス1、1/2補正などと安易に書いておけばよかったが、多分割測光ではいちがいにはいえなくなってしまったのだ。
 そこで[露出補正の攻略]では多分割測光、中央部重点測光、スポット測光、入射光露出計の4つの測光方式の差異を見せるというパターンによって条件ごとの効果の差を実証するという方式をとっている。安易にどの測光方式がベストかというような考え方ではなく、完全に露出をコントロールするための測光モード、もしくは露出計の使い分け、適切な露出補正量を求めるために方法を撮影ジャンルごとに別けて解説してある。
 また、カメラによって測光レベルや露出計の癖があるため、その辺の違いもできるだけわかるように努力した。いままでの露出補正の記事とはひと味違うはずである。
 とまあ、言葉でいうのは簡単だが、露出の比較作例を作るのはいつもながらとても大変なのだ。一つの条件で各メーカーのカメラ、同じ焦点距離のレンズを用意してデーターを記録しながら撮影していく。4つのメーカーを紹介しようとすると、同じ焦点距離のレンズを付けたカメラをとっかえひっかえ撮影しなければならない。
 しかしそういうときに限って雲が出たり入ったりして光の条件が安定しないのだ。ホントに疲れるぜ。またニコンのデーター作りにはニコンF5を使用したが、これが困った。以前のカメラなら、「こおゆう撮影条件でカメラ任せに撮影すると、こ〜んな変な露出になってしまうから、こういう風に露出補正すればいい」
 そんな書き方をすればよかったが、ニコンF5だとけっこう使える露出になってしまうのだ。
 もちろんニコンF5の露出で完璧というわけではないが、ほとんど露出補正の勉強なんて意味があるのかしらん。という状態なのだ。
 そこまでスゴイのはF5だけだから、本気で勉強不要とはいえない。むしろ完全に露出をコントロールしたかったら、単体露出計を使いこなさなければならないというアナクロな結論になってしまうのだ。
 つまり最新のカメラを越えるためには原点に立ち戻らなければならないという事態になってしまった。単体露出計はどうもとっつきにくい。難しそうだと思う人が多いようだが、人物撮影には入射光式露出計が一番簡単なのだ。もちろん入射光式露出計の出た目(測光値)そのままで撮ればいいのではなく、測光値を基準として条件によって補正を加える必要があるが、カメラの露出計を基準として露出補正を考えるよりはるかに簡単なのだ。サンダーはこの露出補正の攻略いがいにも、露出完全マスターハンドブックという本にも書いている。参考にして欲しい。
 ともかく露出は無精をするよりきちんと覚えたほうが楽。テーマや目的によって露出計を使い分け、きちんと補正する方法を学んで欲しい。ともかく写真は一度難しいからイヤと思ってしまえばそこで向上はなくなる。きちんと覚えるべきことはきちんと学ぼう。
 その他のサンダーのお仕事はフォトコンテストの連載[おいしいレンズの話]これはプラナーの55ミリF1.2を取り上げた。限定レンズだから中古が出てくるのを待つしかないが、そういったレンズだからこそ使ってみたいもの。たまたま知り合いが貸してくれた。正確にいうと無理やりテスト撮影(性能判定)を頼まれたので使ってみることにしたのだ。

 またお決まりの[焦点庵暗室日記](日本カメラ)はパターソンの現像タンクの話に突入。フィルム現像編はそろそろ終わりに近づいてきた。

作例について

写真1〜4は、デジタルキャパ創刊号の取材のときに撮影したもの。単純な意味ではデジカメが写真並みになるのはまだまだだが、ポラロイドカメラぐらいの画質にはなってきた。記念写真レベルなら満足できるのだ。あと数年以内にもっと実用的になるだろう。

写真5と6は、[露出補正の攻略]のために撮影したもの。サンダーの写真は基本的にノーマルな仕上げを心がけているが、たまにハイキーで仕上げるのもおもしろい。しかしきれいにハイキー調のポートレートを仕上げるためには、服や背景、メイクなどハイキーに上げるための工夫をしなければならない。けっこう大変なのだ。

写真7は、知り合いの結婚式の合間に撮影したもの。電球の光を撮影するのは露出がけっこう難しいが、ニコンF5はけっこううまくいく。最近ニコンの提灯持ちのようになっているが、F5の測光能力はとても高くなった。あらゆるカメラでねらい通りの露出を得ることは修行が必要だが、F5なら適当に段階露出をしておけば好みの露出を得ることができるのだ。