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吉江雅祥
(元朝日新聞写真出版部長)

CCDとCMOS
 キヤノンとコダックが発表した35ミリフルサイズ・デジタルカメラは撮像素子にCMOSセンサーを使っている。最初はキヤノンとコダックの共同開発と言っていたと思うが発売近くなってくると両方とも自社で開発した撮像素子といっているようだ。発表された撮像素子の発表性能がかなり違うのは、共同開発されたものへの付加価値に違いがあるからだろう。

 キヤノンのEOS−D1sの撮像素子は35.8ミリ×23.8ミリ 1110万有効画素 原色CMOSセンサーとなっている。一方コダックDCS Pro14nは36ミリ×24ミリ・フルサイズ 1371万有効画素となっている。

 キヤノンのD−1sについては9月24日のフォトキナ開会日の翌日には、インターネット・ホームページに載っていたが。コダックPro14nに関しては日本コダックのホームページに掲載されたのは大分遅かった、アサヒカメラの11月号を見てすぐホームページをみたが載っていなかった。

 先月11月はじめ、銀座のコダックフォトサロンでアマチュア団体の写真展が開かれ、オープニングパーティがあってでかけた。展示場にPro14nの紹介記事のコピーが貼り付けてあった。その会はアマチュア写真家が多かったのだが、ここでの話題はコピーを見ながら、もっぱらこのコダックの新しいデジタルカメラに集中した。

 コダックのPro14nのCMOSセンサーとEOS−D1sとの差は擬色軽減用のローパスフィルターがないことだ。アサヒカメラの記事によるとローパスフィルターは画像をわずかにぼかして結像させることで擬色を減らすもので、シャープネスを低下させると書いてある。擬色はは画像のハイライト部分や色の境目に本来はあり得ない色や模様が生ずることで色のモアレと呼ぶものだ。

 アサヒカメラの記事はコダックPro14nはローパスフィルターを使用せず、ソフト処理などで擬色を軽減しているから、切れ味のいい画像を実現している。と書いている。

 さて、そのCMOSセンサーだが、従来から撮像素子として使われてきたCCDとどうちがうのだろうか、キヤノン党の人たちがこんどの35ミリフルサイズEOS−1Dsの発表で、気になっているのはCMOSセンサーのようである。

 CMOSについてはキヤノンがD30を発表したとき派手に宣伝をしたし、カタログにも詳しく説明していたから、大分わかったような気になっていたが、改めてCCDとCMOSの違いはと質問されるとあまりわかっていないことに気がつく。

 だいたい、CCDについても写真を撮る側からすると興味はあるが、あまり詮索をしなかった。説明を聞いてああそんなものかと思っているだけで、使ってみて不具合はないか、銀塩フィルムの描写、表現とどう違うのかに関心があった。

 余分なことかも知れないが、CCDはCHARGE COUPLED DEVICEの略、電荷結合素子のこと、光を電気信号にかえる撮像素子(かっては受光素子、受像素子などと呼称されたが最近は撮像素子と言うことが多いから、ここでは撮像素子とする)。

 CCDはビデオカメラをはじめデジタルカメラ、スキャナーにはじめから撮像素子として使われていたから、とうぜんそれが当たり前のことになっていた。デジタルカメラではこの撮像素子で電気信号に変えた画像をメモリーに保存して取り出す。

 デジタル写真を改めてやりたいという銀塩写真経験者には、デジタルカメラでは、撮像素子とメモリーの二つが銀塩写真のフィルムの役割を受け持っていると説明することにしている。いいかえれば銀塩フィルムは撮像と記録を一緒にやっていることになる。

 キヤノンのCMOSについて、すでに知っているかたには余分のことだが、CMOSはComplementary Metal-Oxid Semiconductor の略、直訳すると相補性金属酸化幕半導体のこと。カメラが使うCMOSはCMOSイメージセンサーのことでCMOSを使った撮像素子というのが正確らしい。

 CMOSイメージセンサーは数千円のオモチャデジタルカメラにつかわれたから、CCDに較べて性能の劣る安物という感じをうけてしまっていたが、EOS−D30で使われたことで、電力消費の少ない撮像素子として認められはじめたところだ。

 EOS−D30は2000年10月発売された。私の友人にもキヤノン党がたくさんいるが、EOS−D30をつかっているものがいない。これは多分新しいものに対する警戒心がはたらいたせいではないかと思う。D−30の評判を聞かないうちにEOSD−60になってしまった。

 CCDかCMOSかの評価は実際に使ってみて具合が良いか悪いかで自然にきまっていくのだろう。二つのメーカーがCMOSイメージセンサーを使用したのは、大型CCDの製造が難しく、高価なためだろう。

 写真を撮る側からいえば、デジタルカメラの撮像素子がCCDであろうがCMOSであろうがじつは大した問題ではなくて、カラーフィルムの性能が1960年代から80年代のかけて改良発展していったのと同じことなのだ。

 現在私たちはデジタル写真、デジタルカメラの良し悪しは、銀塩写真との比較で決めている。35ミリフルサイズ撮像素子カメラが出そろって、この性能が銀塩カメラ、銀塩フィルムを超える時がくるであろう。このときから本当の評価がはじまるのだろうと思っている。