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吉江雅祥
(元朝日新聞写真出版部長)

最近アマチュアデジタル事情
 デジカメの国内出荷台数が予想に反してプラス成長を続けていると新聞(朝日新聞11/06朝刊)が報じている。デジタルカメラの急速な普及で、すでに飽和状態になったと見られていたカメラ需要だったが、レンズ交換式一眼レフ型デジカメの売れ行きが今年になって急速に伸びて国内市場での出荷台数が増えてきたためと解説が付いていた。

 今年6月以降になって、筆者が関係しているいくつかのアマチュア写真家の月例会のなかでも使用カメラに大変化が起きている。全日本写真連盟の会員数は2万人弱、そのなかで各支部が毎月開いている各地の月例会に参加している会員は1万5千人位と推測されている。

 筆者が月例会に関係している八つの支部での発表作品のデジタル写真と銀塩写真(フィルム写真)との比率は、支部によって異なるが全体を平均してみると3対7くらいだろうか。これは月例作品での比率で、銀塩カメラで作品を制作している人の大部分がじつはコンパクトデジカメを持っている。

 ところが、今年の夏になってこれが大きく変化してきた。ソニーの一眼レフタイプデジカメα100の発売だ。α100の前にレンズ交換式ではないR-1が発売されてこれが1000万画素を超えたことでアマチュア写真家たちにかなり注目された。それから半年、コニカミノルタのカメラがソニーに移ってα100が発表された。

 ソニーの宣伝のうまさもあり、潜在的なミノルタフアンが飛びついた。発売後すぐにα100を買った数人に購入の理由を聞いてみると、1000万画素以上のCCDを使用していること、ボディに内蔵された手ブレ防止機構がついていること、高級一眼レフカメラ使用者から聞いていたカメラボディ内部のホコリ対策がこのカメラではアンチダスト機構として組み込まれていたこと、いままでの一眼レフデジタルカメラに比べて軽く、コンパクトなことなどを上げていた。

 カメラメーカーとしてのソニーに不安を抱いていた人もミノルタが作っているからみたいな安心感も加わった。アマチュア写真家たちの新しいメカニズムに対する情報網は大変に正確で広く驚くことが多い。ソニー・ミノルタの一眼レフデジタルカメラは機能に優れ、今までの一眼レフタイプデジカメに比べると値段が安いと噂が立った。

 ソニーα100が夏になって猛烈に売れた。確か8月の一眼レフタイプのデジカメ売り上げが1位になった。これで慌てたわけではないだろうが、キヤノンとニコンが追いかけた。9月になってキヤノンは1010万画素のEOS-KissデジタルXを発売、ニコンも同じく1020万画素のD80を発売した。

 この3台を比べてみると機能的にはあまり変わりがない。それまでデジタル一眼レフの売れ筋の機種と比べてみると画素数が多くなり、基本性能は変わらず。むしろ新機構が加わった分、値下げしたように見える。値段はいずれも10万円前後とほぼ同じだ。

 いままで一眼レフタイプのデジカメを買おうかどうしようか迷っていた人たちが、飛びつくように買った。これでアマチュア写真家たちの銀塩からデジタルへの傾斜が大幅に変わった。秋になってどの月例会に行っても、先生新しい一眼レフデジタルを買いましたという会員が2、3人ずつ増えた。

 業界団体であるカメラ映像機器工業会発表の毎月売り上げ台数をみると翌月にはキヤノンが首位を取り返したようだが、カメラ量販店の売り場でのベストバイカメラを見るとソニーα100がいまだに売り上げ首位になっている。

 アマチュア写真家たちは今まで自分が使っていたカメラの機種を簡単に変更することはしない。キヤノン党はデジタルになってもキヤノンを買うし、ニコン愛好家はニコン以外のデジタルカメラはなかなか買わない。ミノルタはソニーだがソニーの場合はミノルタフアンだけでなく全く新しい購買層が現れたのだろう。ペンタックスもK-10Dの発売で盛り返しそうだ。

 筆者が行っている月例会で、これまで参加者のデジカメ使用機種は、一番多かったのはニコンのD70であったが、夏以降は今年発売の3機種が増えてきた。心配なのは、耐久性だ。故障を起こさず素晴らしい機能がフルに働いてくれることを願っている。

 話はちがうが、今年、行われた全日本写真連盟主催のデジタルフォトコンテストの応募作品から、アマチュア写真家たちの傾向を考えてみる。全日本写真連盟という団体はアマチュア写真家の全国規模の団体で朝日新聞が後援している組織。このコンテストはその団体の東京都本部が中心で行われたコンテストであった。

 8月末が締めきりで、9月コンテストの審査が行われた。筆者も審査を依頼され応募作品全部を見る機会があった。応募点数は1700点を超え、北海道、沖縄、から関西、東北にいたる全国規模のコンテストになり、レベルの高い激戦コンテストであった。

 応募条件はデジタルプリントであることだった。応募作品を見ると、まずプリントの質の差が目立った。上手にプリントされた作品とあまりにも稚拙なプリントがあって、きたないプリントの作品がまず選別され選外となった。

 加工作品はどうか、かなりの点数の加工画像があった。色彩のバランスを変えたポスタリゼーション作品や画像の形を変化させたもの、フォトショップなどのフィルターを使った変化や中にはサードパーティ製のソフトを使ったものなどもあったが、大変に初歩的なものが多く、選ばれた入賞作品には加工作品はなかった。一つにはテーマが「心に残る瞬間」であったから、これを表現するのには加工技術が追いついていなかったとも言える。

 コンテストと言えば、朝日新聞主催で大阪と東京で過去2回デジタルフォトコンテストが行われている。たしか1997年と99年だった。この2回も審査を頼まれた。このときは半数以上が画像に手が加えて作られた加工作品が多かった。

 当時はデジタルカメラに優れたものが無かった。1996年筆者が買ったデジタルカメラはカシオのQV-10 で画素数25万画素であった。初期のカメラつきケイタイよりもはるかに性能は劣っていた。画像の良し悪しどころかメモ用という使い方だった。

 だからフィルムカメラで撮影したものをスキャナーでPCに取り込む作業が普通であったし。色彩を変え、画像をモンタージュしたりコラージュを作るのがデジタルフォトだと考えられていた時代である。今回のデジタルフォトコンテストの作品を見るとその傾向が消えストレート写真への移り変わりを強く感じるコンテストであった。

 筆者の周囲にいるアマチュア写真家たちの月例デジタル作品を見ても、数年前までは写真を加工することに面白さを感じて熱心に写真に手を加えた作品があったが、デジタルカメラの性能が上がり、劇的な発展をしたことがデジタルフォトの考え方に変化を与えたとも言える。

 カメラをプリンターに直結してプリント出来るインクジェット・プリンターが結構人気があるそうだから、そんなことも影響しているのだろうか、カメラで写したままのストレート表現がデジタル写真の大勢になってきたのかもしれない。

写真説明
ソニーα100
キヤノンEOS Kiss デジタルX
ニコンD80