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吉江雅祥
(元朝日新聞写真出版部長)

年賀状と成人の日
 元旦、届いた年賀はがきをゆっくり見てから、メールを見ました。不思議なことに年賀のメールが1通も届いていない。昨年はかなりの数の年賀メールがきていた。どうしたのか理由を考えていると、たまたま友人から電話がありこの疑問を話してみる。
 ちょっと飽きてきたのかなーと友人はいう。

 これは友人の説です。メールに飛びついてメールごっこを楽しんできたのが、ちょっと鬱陶しく成ってくる時期だ。周りを見回しても毎日、20通、30通とメールが来てこれを開けるのが日課になっている人が多くなっている。この人たちが、メールをいささか大変に思い始めてきた。

 メル友は日常的なもの、年賀状は1年分のご無沙汰を取り戻そうとする行為、出発点が違っているし、年賀メールを改めて出して、これ以上メール交換が増えては困るという思惑もある。

 一昨年の暮れ頃は、まだメールを出すことが新鮮でクリスマスカードと年賀状をメールで出すことで楽しめたが、去年の暮れには、これに飽きてきた上、ケイタイメールが圧倒的に増えてきたことで状況が変わった。ケイタイではPCメールよりももっと日常的だから、あらたまって年賀状などという状況ではない。

 年賀状はメールの世界のものとは違うもの。これがはっきりしてきた。この友人説によれば、去年の年賀メールは一時的なもので、年賀状をメールに変えることが間違っていた。と言うことになる。

 今年いただいた年賀状は去年より20%も増えていた。

 1月12日成人の日、今年も渋谷公会堂にでかけました。写真学校の専科の実習のためです。考えて見るともう14年、毎年この広場で新成人たちの写真を撮っています。学校授業の実習ですから、学生たちを指導しなければいけません。

 でもこれとは別に、若者を見ているのが好きである。新成人たちは毎年少しずつ変わって来る。この変化を見ることも楽しみである。

 去年の渋谷公会堂前では、はじめてカメラつきケイタイが現れた。カメラつきケイタイが画素数で10〜20万画素クラスのときだった。2003年はじめ、この連載でカメラ付きケイタイのことを書いた。あのときは10万画素から20、30万画素カメラがケイタイについて、びっくりしていた。

 この調子では二十歳前の若者の世界では、カメラ単体(写真を写すためだけの機械)では写真を撮るものなど、いなくなってしまうのではと思われた。しかも、カメラつきケイタイの受光素子は一年の間に200万画素になった。

 ところがである。今年、成人式で集まった新成人を見ていると、成人式の始まる前、式が終って会場の外にでた彼らがさかんに記念写真を撮る。お互いに向き合って撮影しているもの、数人のグループで写真を撮っているものなど広場は撮影会場になる。

 この記念写真撮影に去年姿を見せたカメラつきケイタイがなかった。ケイタイはもっているし、つかっている。でも電話として使っているので、カメラとして使っているのをほとんど見なかった。これは驚きであった。

 4時間以上、広場にいてカメラつきケイタイで写真を撮っているの見たのは、一人だけだった。では記念写真を何で撮っていたか、正確に数えた訳ではないが、コンパクトタイプのデジタルカメラが60%くらいか、あとの40%は使い捨てカメラ(レンズつきフィルム)であった。

 興味があるので撮影をしている男の子、女の子あわせて20数人に聞いてみた。
 使い捨てカメラを使っていた人は、カメラつきケイタイはもっているが記念写真をプリントしたとき写真がきれいでないから、今日、会場に来る前に駅でカメラを買ってきたという。

 デジタルカメラを使っていた人は、カメラつきケイタイは持っているが一人だけ撮るにはいいが、たくさんの人を撮る記念写真は頼りない。またプリントに適さない。使っているデジタルカメラは両親や、兄弟が使っているものを借りてきた。と大体が同じような答えだった。

 使い捨てカメラは銀塩カメラである。銀塩の35ミリフィルムをつかうコンパクトカメラは見なかった。銀塩のコンパクトカメラは売れていないと聞いていたが新成人の親御さんたちの年齢層が一般に使うのはデジタルカメラに変わってしまったことがわかる。

 質問した20数人のうち持っているケイタイでカメラ付きは12人いたが、最新のドコモの505のような200万画素カメラを持っているのは2人だけだった。もっとたくさんの新成人と話をしたかったが日が暮れてきてしまった。

 この傾向は渋谷での成人式に集まった特別の例なのかも知れない。しかしどうやらカメラつきケイタイに関してはほとんどが使ったことがあるが、あまり画素数の多くない初期の物を使ったことがあって、ケイタイでお互いの顔の画像をやりとりしたり、液晶上で眺めている分にはよいが、プリントしてみるとカメラのようにはいかないと決めてしまったようなところがある。

 デジタルカメラが拡がっているのは予想どおりだったが、使い捨てカメラがこんなに使われているとは考えられなかった。

 成人の日から数日たって高校生のいるお母さんにその話をしていたら、その方のお嬢さんがコンパクト・デジタルカメラをねだるので去年秋買ってあげた。メモリーが128MBという指定だそうだ。

 どんな使い方をするかというと撮った写真をカメラで整理して、128MBだと100枚以上の画像がファイルできる。整理した写真アルバムを友達同士、カメラの液晶画面で見せ合うのが流行っているだそうだ。これはどうやらカメラではなくてコンパクトなアルバムを持ち歩いていることになる。

 若い人たちはとんでもない遊びを開発するものだ。ケイタイ電話はカメラではなくて、ほかのいろいろな付属物が魅力だそうで、値段の高いカメラつきケイタイはあまり人気がないそうである。

 今年1年でどこまで変わるかデジタル写真の世界はとても予測できない。

写真説明
  写真はいずれも成人式の日、渋谷公会堂前で