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プリントと絵画の融合 Fグラの世界


 Fグラというものをご存知でしょうか?
 液体乳剤を使い、和紙、壁紙、大理石等、印画紙ではないものに写真を焼き、彩色するという、写真と絵画のミックスさせたような、新しい表現手法です。
 その製作方法は、富士フイルム製の液体乳剤の説明書に譲るとして、「Fグラの会“遊”」の副会長である小山京子さんのインタビューを掲載します。


編:まずは、発足の経緯をお聞かせ下さい。
小山さん(以下 小):もう8年くらい前になるでしょうか。藤井秀樹先生のワークショップがありまして、それはコニカの液体乳剤を使用したものだったのですが、それがFグラとの出会いでした。ワークショップは10回程で終わってしまったのですが、どうしてもこの手法の研究を続けたくて、藤井先生にお願いしたのです。
編:コニカの液体乳剤は、市販に至らなかったんですよね。
小:そうなんです。せっかく学んだと言うのに、それで終わりになってしまったのです。それからしばらくして、今度は富士フイルムから液体乳剤が市販化されることになりまして、それで、「Fグラの会“遊”」結成となった訳です。
編:コニカのは水性で、富士のは樹脂系でしたでしょうか。
小:そうみたいですね。富士のものは、黒が強すぎる傾向にあります。コニカの方が淡い感じでした。それぞれによさがあり、使い分けられるとよかったのですが。
編:コニカには市販化を望みますし、富士には更なる開発を期待したいですね。「Fグラの会“遊”」は、会長に藤井先生を迎えて結成されたのが1991年でしたね。
小:3月だったと思います。最初は5、6人でしたでしょうか。全く新たな出発でした。今までにない手法でしたから、乳剤を塗る素材から、塗る方法、乾燥、焼き、現像、定着、水洗、彩色等、様々なトライアンドエラーを繰り返して、少しづつ方法を確立していきました。
編:ご苦労があったのですね。
小:ええ。でも、その2年後の1993年にオリンパスギャラリーで展覧会を開くまでになりまして、なんかこう、報われた気持ちでした。秋山庄太郎先生に名誉会長になっていただけました。
編:オリンパスギャラリーで、写真展を毎年やられていますよね。
小:ええ、とても感謝しています。
編:Fグラの魅力とは何でしょう。
小:そうですね。何もないところから作り出すことでしょうか。プロであれ、アマチュアであれ、初心から入っていかないと作れない。そして、そこからそれぞれが自分の方法を見つけていって、作品を作り上げていく。それは楽しいですよ。様々なトライが考えられますから、藤井先生もおっしゃっているのですが、エンドレスですよ。
編:作者のイメージによって写真に彩色されていくわけですが、これを写真と呼べるのかどうかということもありますね。
小:イメージによって、微かな色合いを楽しんだり、色を前面に出す方もいらっしゃいます。絵の世界と写真の世界の中間が生まれた、とも言えるかも知れませんね。どちらの世界に出しても恥ずかしくないものが出来てくると思います。先日の展覧会では、そのようなお言葉もいただきました。
編:実際の素材はどうでしょうか。
小:コットン、キャンバスなどがよいですね。アクリルの作品は、ものすごく苦労しました。もうやりたくないくらい。(笑)タイルは、すごくいいのですが、年数が経ってくると細かな亀裂が入ってきてしまいます。
編:これはこれで趣がありますね。ある程度進んだ所でアクリルか何かで固めてしまったら良いかも知れませんね。
小:そうですね。まだ出来て間もない手法ですから、この先何十年という変化は予測しきれない所はありますね。BFKというフランスの洋紙があるのですが、これはお薦めしますよ。あと、壁紙も種類が豊富で面白いですね。
編:和紙はどうでしょう。
小:普通の和紙では水洗でバラバラになってしまいますから、特殊な和紙を使うのですが、ものによっては斑が浮いてきてしまいます。
編:水洗に耐える和紙というのは、おそらく接着剤のような物で固めているのでしょうから、何らかの化学変化が起きてしまうのかも知れませんね。これからの展開はどうでしょう。
小:最近、出来上がった作品を複写して、それを別の素材に転写するということも始めました。
編:(素材に印刷された物を見ながら)これはいいですねぇ。
小:お茶を出すときに、これを敷くと素敵でしょう? 写真ももっと様々な楽しみ方があると思いますよ。
編:今日はありがとうございました。

取材を終えて
 Fグラは、すでに写真でも絵画でもない表現手段に昇華していた。新しいものだけに、これからまだまだ研究される要素が多く存在する。プリントのひとつの形として取材をしたのだが、それを越えた世界を観たような気がする。

Fグラによって制作された作品を使った商品に御興味のある方はご一報下さいませ。


Reported by AkiraK.