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 この秋は、仕事ではないのに紅葉をみることが多かった。
 公園でしばらくイチョウやカエデを眺めていて、ふと周囲を見ると、いつの間にかアマチュアカメラマンのみなさんが立派なレンズを同じような方向に向けている。ちょっと旧式のデジタルカメラの私は、なにか聞かれると恥ずかしいので、カメラをジャンバーで隠してしまう。それでも、なんだかみなさんと前からの知り合いであるように、言葉を交さないのに、そこにいるのがうっとうしくなくなってきた。こんないい季節に仕事もしていない私は、どう見てもプロ写真家には見えない。そのせいもあるだろう。
 しかし、フリーというのはありがたい。平日にぼんやりと紅葉をながめていても、誰からも苦情を言われないからだ。 葉っぱの揺れがおさまるのを黙って見ている愉悦。
 これは、すでに東京隠遁生活のはじまりだろうか。


大西みつぐ
1952年  東京生まれ
1974年  東京綜合写真専門学校卒
1985年  「河口の町」で第22回太陽賞
1993年  「遠い夏」で第18回木村伊兵衛賞
写真集に「WONDERLAND80-89」。個展多数。
東京綜合写真専門学校講師、東京カメラ倶楽部会員
データー:Apple QuickTake100 &150

町があるから生きていける。町はいつでもそこにある。
大西みつぐ絵葉書帖2「町の灯り」97年1月発売予定・定価600円
mole(四谷)・平永町橋ギャラリー(神田)・アートグラフ(銀座)ほかで発売予定。