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 2カ月か3カ月に一度、写真撮影の依頼が舞い込む。
 信じられないだろうが、町を歩くことしかできない写真家なんてこんなものだ。
それでもたまに地方に行けるのはうれしい。めずらしい風景や美味な料理を食べて、いつものように町を撮るのだから、これはとても楽しい仕事になる。
 ひとつの土地に長期間滞在するようなこともないというのも都合がいい。いつでも近所が恋しくなってしまうこともあり、そこそこにして旅を切り上げられるから、へんな「未練」も残らないし、その土地の「通」を気取ることもない。
 つげ義春は、旅に日常性を持ち込まないのだが、私は逆にすっかりそれを持ち込むことによって、この町にいる自分を確認しようとしているのかも知れない。

 葛西の人工なぎさの風景もすっかり秋になった。新しく買った自転車の調子も上々だ。なんだかしみじみと写真を撮ってみたくなっている。


大西みつぐ
1952年  東京生まれ
1974年  東京綜合写真専門学校卒
1985年  「河口の町」で第22回太陽賞
1993年  「遠い夏」で第18回木村伊兵衛賞
写真集に「WONDERLAND80-89」。個展多数。
東京綜合写真専門学校講師、東京カメラ倶楽部会員
データー:Apple QuickTake100 &150