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おわび
 サンダー平山(本名 平山真人)の父平山誠が10月22日天命を全うし、他界いたしました。それにともなう看病、葬儀、各種手続き等により、やむを得ず執筆活動を規模縮小せざるを得なかったため、サングー撮影隊緊急発信をお休みさせていただきました。まだ手続きなど、残され雑務みも山積しているため、読者の皆様には、まだまだご迷惑をかけることと思いますが、これを機会に心機一転、執筆活動、作品製作に力を入れていく覚悟でございます。よりいっそうの御支援、愛読のほどをよろしくお願いいたします。  サンダー平山

ニコンF5時代ゆえのオリンパスの価値

 ついにニコンF5が発売される。この原稿を書いているのは10月31日、サンダーが予約したニコンF5はもうお店に届いているはずだ。そうなると一刻も早く取りに行きたいところだが、悲しいかな原稿を書かねばならん。明日は取りに行くぞ。  一緒に予約した仕事仲間のフチダはもう買ってきたはず、靴の写真家である[もの字]も今日中に行くはずだ。サンダーは明日モモちやんと一緒に行くことになっているからガマン。でも悔しいからフチダに電話をしてみる。
 トゥルルルル・・・・
「もしもし、F5買ってきたぁ?」
「いまストラっップ付けているところだよ」
 フチダは今池袋のさくらやから戻ってきたばかりらしい。
「どお、調子は?」
 悔しいサンダーは値掘り葉掘り体制になっている。ザンダーがこういう仕事をしていて、いくら発売前にさんざんいじくり回しているといっても、やっぱり自分が買う段になると気になるのだ。
「まだ電池も入れてないよ」
 サンダーだったら、お店を出た瞬間に電池を入れて、レンズを付けて、フィルムまで入れてしまうところだが、フチダは後生大事に仕事場まで箱に入れたまま持って帰ったらしい。アレコレしゃべっているうちに電話の向こうでカチャカチャいいはじめる。
「ほらほらえふごの連写音だよ」
「く、くそお」
 ついにフチダのF5が動き始めた。これみよがしに軽快なモータ音を響かせている。ザンダーは連写する必要はほとんどないから、高速モータードライブにはあまり興味なかった。でもF5を使ってみると、たとえシングルで撮影していても、一瞬で巻き上がる感触は何物にも変えがたいのだ。やっばりカメラは見かけ上のスペックよりも使ってみた感触のほうが大切なのだ。
「ふん、いいもん! ワシだって明日買いに行くさ」
 サンダー平山もずいぶんとカメラを買ってきたが、やっぱり今世紀最後の最高級一眼レフとなるとけっこう緊張する。とくに新品できたてだから、中古のライカを買うのとはまた違った緊張感がある。ライカだったらぼろぼろで安いから買っておくとか、もう少しキレイなやつを買おう、というように選択に余裕があるが、できたてで予約しているカメラというのは強制的に買わなければならない。ニコンF5となると、予約が来た時点で買ってしまわないと、次にいつ買えるかわからないからだ。下手をしたら、一年ぐらい待たなくてはいけなくなるかもしれない。
 最近の電子カメラは頭脳があまりにも複雑で、完全に調整されるのがいつになるのか、わからないから、発売されてすぐに買うの得策ではない。ニコンF5も最初のテストから発売されるまでにずいぶん調整されているらしい。昔の単純な機械カメラだったら、調整する部分も少ないから発売までに十分仕上げることができた。でも電子カメラはどこにバグが潜んでいるかダレもわからない。
 これはニコンF5に限らず、どんなカメラにもいえる現代のカメラが持つ危険性。でもF5はかなり入念に調整されての発売だから、単純なミスはもうなくなっているはすだ。
 さて、今回のメインテーマであるニコンF5の時代を迎えてのオリンパスの価値。そこを考えていこう。
 なぜオリンパスが今頃出てくるのか。そのきっかけはニコンF5の大きさである。昔の超高級機はモータードライブが脱着式だったからコンパクトに使いたい場合はモーターを家において行けば良かった。ところがニコンF5になって、大きさという意味でバッテリーパックすら交換できなくなったから、撮影条件によって選択はできなくなったのだ。
 大きな問題はバッテリーパック交換式が不可能な時代になってきたということ。キヤノンEOS-1Nでは、ブースター方式により巻き上げ速度を変える方式を取っているが、それに伴う内部メカ的なロスが多くなる欠点、さらにブースターを外したときのタルさ加減はストレスが多い。
 結局高速モータードライブ、AF、測光回路などの能力を高くし、しかも耐久性のアップといった、最高級機としての条件を満たしていくとF5の大きさは仕方がないものというしかない。
 そこでオリンパスに目を向けてみると、ボディーを含めてレンズやシステムがとってコンパクトである。もちろんそんなことは20年以上も前からわかっていることではあるが、ニコンF5が登場してこそ見直すべき問題なのだ。
 オリンバスOM-1が登場したとき、その小ささに皆が驚かされたわけだが、その時代のニコンの最高級機であるニコンF2だって、今から見れば十分コンパクトである。ニコンF5の機能や性能は大きな魅力だし、メイン機として使って行くなら、絶対にF5だと思うが、小さくて高性能なカメラが欲しいときだってあるのだ。
 もちろんそれは撮影目的や方法によって異なるから、小さいカメラだけで用が足りる人もいるかもしれないが、使い分けたい人もいれば大きなF5だけでいい人もいる。
 ザンダーは使い分けたい人だし、一つのカメラだけだけ使っていてもおもしろくはないと思うタイプだから、いろいろ使っているし、もっといろんなカメラを使ってみたいと思うのだ。
 ところがカメラに評価を下そうとするとき、それ一台しか使わない前提で評価してしまうのはおかしい。ニコンF5が大きくて重いからダメだというのはお門違いなのだ。F5の性能はあの大ききだから実現できたのであって、快適な性能を楽しみたかったら大ききや重さは、自分の体力でカバーしなければならない。
 年を取っている人のことを考えろ。という意見もあるが、気力のある人たちは中判カメラや大判カメラを担いで歩き回っているお年寄りはいっぱいいる。いくらF5が大きいからといって、中判カメラと比べたら大したことはないのだ。
 とはいえ、小さくていいカメラも欲しい。という欲張りなサングーは、最近オリンパスのシステム充実にはげんでいる。
 耐久性という点で、やっぱりニコンよりは弱さを持っているものの、いまだに現行品でコンパクトで本格的なシステムを持っているのはオリンパスだけなのだ。いままでサンダーが持っていたオリンパスは、OM-1のボディーが一台、レンズが50ミリF1.4、100ミリF2.8、135ミリF3.5の3本で、その他ベーローズと拡大撮影用のマクロレンズがある。この拡大マクロは友人(高校時代の悪友?)から譲り受けたもので、欲しくてもらったのではなく無理やり渡されたものだから、実は全然使ったことがない。
 拡大マクロは、自分がもらう以前に何かのテストで使用したことはあるが、サンダーの撮影範囲ではなかなか活躍の場がないのだ。135ミリも拡大マクロとともにもらったものなので、自分で買ったレンズは50ミリと100ミリだけだ。真実は21ミリF3.5も以前は持っていたが、知り合いに貸したまま戻らなくなってしまった最近は貸すと戻らないということを学習したので、基本的に貸さないことにしている。
 よく使っていないものがあったらゆづってといわれるが、サンダーの場合どんなものでもいつ原稿のネタになるかわからないので、数年前にけして貸したり売ったりしないことを心に決めたのだ。
 F5の大きさをみてシンプルなオリンパスが欲しくなったサンダーは、まずボディーを悩んでみた。AEが使えるOM-4Ti。これを選ぶのが順当である。でも残り少ないメカニカル機であるOM-3Tiも捨てがたい。コンパクトてチタン外装、横走りのメカシャッター。F5とは正反対の路線のカメラがどうしても気になるのだ。
 OM-3か4か、散々なやむ。う〜んっ、どうしよう。
 悩むといっても基本的に道楽での間題だから、たいしたことはない。メカのOM-3Tiの魅力と、スポット測光が使いやすいOM-4Tiのどっちがいいかが最後の争点となる。3も4も基本的なスポット測光のシステムは同じだが、AE機のOM-4Tiはスポットボタンを押すだけでAEからマニュアルに切り変わったのと同じ効果があるが、OM-3Tiの場合はスポットボタンや、場合によってハイライトボタンとかシャドーボタンを操作して、なおかつ絞りやシャッター速度の調整を加えなくてはならないから、OM-4Tiより手間がかかるのだ。
 けっきょくOM-3Tiより価格の安い4を選ぶことにした。オリンパスの特徴である使いやすいスポット測光はやっぱりOM-4Tiなのだ。家に帰ってからテスト用に借りているニコンF5とOM-4Tiを比べながらその大きさの違いを楽しむ。サンダー平山のこだわりは臨機応変だから、瞬間瞬間で必要な機能がどんどん変わるのだ。おねえちゃんを本気で撮るときは大きなニコンF5やキヤノンEOS-1Nが必要だし、ブラブラしながら撮るときはオリンパスが軽快だ。
 しかしボディーだけ増やしてもレンズが足りなければ使えないのでレンズを捜索することにした。まず必要なのが85ミリF2である。100ミリを持っているから無理に85ミリを買う必要はないのだが、85ミリはサンダーの標準レンズだからなくてはならないのだ。
 それと足りないのは広角系。一本もないから大貫カメラの中古コーナーで35ミリF2を見つける。これもいろいろ使えそうだ。基本として超広角も欲しいから、あちこちの中古屋を覗く。
 オリンパスの中古は充実している店とほとんど置いていない店があっておもしろい。高輪の松坂屋には、その日オリンパスものはぜんぜんなかった。悔しいので新橋に行ってみる。ウツキカメラのオリンパスの棚を観察していると18ミリF3.5がある。6万8千円だ。オリンパスの18ミリは受注生産品だから中古で見かけるのはとっても珍しい。
 実はオリンパスの18ミリの実物を見るのは初めてなのだ。今までにテストしたこともないし、時代はすっかりAFになってしまったから、表向きの仕事ではなかなかオリンパスを使う機会はない。とっても小さなレンズでフィルターアダプターが欠品になっているから、いい加減に撮ると指が画面に入りそうだ。でも18ミリという焦点距離も好きだから買うことにした。
 おおむねレンズが揃ったところで悩むのはワインダーである。ポートレートがメインのサンダーとしてはモータードライブ、もしくはワインダーが欲しいところだが、ニコンF5の大ききを見てオリンパスを揃える気になったサンダーとしてはワインダーを付けてしまって大きくなることが気になる。
 とくにOM-4Tiの方は、ワインダーを付けるとスポット測光が使いにくくなるから悩んでしまう。もともとの目的として、気楽に使いたいからオリンパスを買ったのに、買ってしまうとやっぱりオネエチャンを撮りたくなる。人間はとってもわがままなのだ。
 それから、どうしても気になる90ミリF2マクロも欲しかったので、最低でもワインダーは絶対に必要なのだ。オリンパスの90ミリマクロはけっこう太いので、三脚に付けるとボディーよりはみ出してしまい使いにくい。ゲタとしてワインダーが必要なのだ。
「えぇ〜い、ここまで来たらOM-3Tiも買ってしまえ」
 ザンダーはカメラを買うと、きちんと使えるシステムを組まないと満足できないという悪癖がある。本人はそのことをよく知っているから、ハッセルとライカの一眼レフ、オリンパスは手をつけていなかったのだが、オリンパスはついに本格的に手を出してしまった。三宝カメラに行くとちょうど金融新品のOM-3Tiがある。ワインダーの2型も中古品があるのでセットで買うことにした。
 OM-3Tiにワインダーを付けていろいろと撮っててみる。のんびりとスポット測光で露出を測りながら撮るのは楽しい。ベンチや手すり、サンダーは人のにおいがするものが大好きだ。しかし、ワインダーを付けてしまうとやっぱりスポット測光ボタンには指が届きにくい。
 まあ何でも慣れてしまうのがサンダーの得意技だから、一日使っていればほとんど気にならなくなるのだが、オリンパスを使うという特別な選択の中で、もう一つ納得の行かない部分があるのだ。
 結局家に帰ってから、ワインダーはOM-1に付けてザブシステムとして使うことにした。OM-3Tiと4はペアで使い、手持ち軽量セットを組み上げた。結局のところ各メーカーともにメインシステムとサブシステムを作ってしまうのがサンダーの悪い癖。これだけいろいろあると、すべてを有効に使っているわけではないが、いろいろなカメラに対する質問をこなそうと思うと、結局こうなってしまうのだ。
 問題はニコンF5に戻るが、大きくなったF5の価値は認めるとして、こうなったらF5に近い性能を持ったコンパクトな高級機も必要なのではないか。サンダーは真剣にそこを考えている。
 基本的にはF3でもいいのだが、ストロボのマルチ調光機能とRGB測光を備えたものF6と呼べるものが欲しい。そういった作りわけ、使い分けがこれからの時代は必要だと思うのだ。最高級機種は一つだけという考え方は終わりにすべきなのだろう。
 もう一つおまけにいうと、ライカはM3とM4といわれるように、オリンパスもOM-3TiとOM-4Tiで終わってしまうのか? なんらかの新機種も欲しいし、ユーザーも使い分けができる発想を持って欲しい。