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吉江雅祥
(元朝日新聞写真出版部長)

オリンパス−XA (1)
 先月、このHP連載を見た学生が、先生EEカメラって何ですかと質問をしてきたので、あっと思った。どうやらEEというのは死語になっているようだ。そういわれてカメラ雑誌などをみてもなるほどEEなどという言葉はまったく出てこない。

 カメラはEEからAEの時代も飛び越えて、オールオートの時代になっているのだから、いまさらEEなどをもちだしてもも、これは通じないのが当たり前だろう。EEなどとあらためていうと、どんなカメラかと思う人が出てくる。パーソナルユースのカメラは全部オート機構カメラになっているのだから、そんな言い方がおかしいのかも知れない。

 改めてEEとは何であったかを、振り返ってみるとEEはエレクトリック・アイ(Electric Eye)の略であった。はじめは被写体の輝度を測光するための受光体(目玉)のことであったが、それによって自動的に標準露出が得られることから自動露出機構全体をさしてEEと言うようになった。

 だからオートフォーカス(焦点)機構のカメラがでてくるまで、オート露出機構を持ったカメラを、EEカメラと言っていたように思う。しばらくしてAEカメラという言い方になった。念のためにそのころの写真事典をひいてみるとEEは受光素子である書いてあるのに驚いた。

 最近、デジタルカメラでは受光素子と言う言葉はおなじみの言葉になっていて、カメラの受光素子と言えばCCDかCMOSによるものだが、40年以上も前に受光素子などという言葉がつかわれていたのは知らなかった。

 日本のカメラ業界は一眼レフとEE(AE)カメラで世界制覇をはたしたようなものだが、考えてみるとEEによる自動露出測光機構が画像を正確な露出でとらえることによって、それまで難しかった写真を大衆化したことは間違いない。

 女性は写真は向かないと言われていたのに、女性も気軽にカメラを持つようになったのは、EEカメラが出来たことと海外旅行ブームが重なったことによると考えられる。

 EE・AEカメラの時代は昭和30年代後半からAFカメラの時代までである。AF(オートフォーカス)カメラは昭和51年(1976年)のジャスピンコニカがあるが、じっさいには昭和61年(1986)のミノルタa−7000が一般的になったはじまりだとおもう。

 ということはEEカメラのはじまりは一般に昭和35年(1960年)といわれているから、30年以上の間がEE・AEカメラの時代であったと言うことになる。

 先月この欄でEEカメラはプロの写真家や、ハイレベルのアマチュアカメラマンの興味をあまり惹かなかったと書いたのだが、この時代にニコンやキャノンの高級一眼レフカメラもTTL・AE機構を次第に取り込むようになり、いつしか自然にこれに慣れていくことになる。またコンパクトタイプのAEカメラを補助カメラという名目で持ち歩くようになっていった。

 このEE・AEカメラの時代に補助カメラという形で使われるようになったもので私がこれは一番よかった、最高だと思うカメラのことを書こう思う。オリンパスペンのことを書いていたのでオリンパスの続きのようだが。ここに登場するのはオリンパスXAカメラである。

 考えてみるとオリンパスのカメラで私が長い写真人生で使ったのは、オリンパスペンとXAとデジタルカメラ時代になってつかったいくつかのカメラである。目下一番愛用しているカメラはカメデアEー10である。

 このXAカメラはいわゆる補助カメラとして買ったと言うよりは、オリンパスペンの後継機として買ったという言い方の方があたっている。オリンパスペン以来お世話になったいた宣伝部の人が、こんなカメラはどうですか、といってXAを初めてもってきたときは、ハーフ判のカメラだと思いこんでいた。

 カメラの裏ブタをあけて見るまで35ミリフルサイズなどとは思っても見なかった。大きさはオリンパスペンと変わりがなかった。ペンにしゃれたレンズカバーがついたという感じである。

 これならばポケットに入れるとき、レンズキャップをいちいちつける面倒臭さもないしキャップをなくしてしまう心配もない。それに組み込みではないが簡単にカメラに取り付けられるストロボ(エレクトロニックフラッシュA11がついていた。

 当然のことであるがEE機構もついている。さらに驚いたのは焦点調節がノブを動かして簡単にできることだった。部屋にいた同僚たちとこのカメラを見ながら、がやがやとデザインがよいの、ストロボフラッシュがちょっとたよりないとか、焦点調節の基線長がたりないとか、いやこのカメラに焦点調節の必要はないとかいっていたのだが、宣伝部の人がはじめに何も言わなかったものだから、だれもがハーフ判カメラと思って批評をしていたことになる。

 裏ブタをあけてフルサイズだとわかったとき、そこにいた全員が驚いた、そうしてすぐこれは買いだと言った。だれもがフルサイズでこんな小さいカメラが出来ることは予想していなかった。

 オリンパスペンの寸法は巾107ミリ・高さ70ミリ・奥行き38ミリである。それに対してオリンパスXAは巾105ミリ・高さ65ミリ・奥行きはカバーケースをかぶせた状態で38ミリだから一番小さかった最初のペンよりも小さいことになる。

 35ミリフルサイズカメラの小型化は、オリンパスXAが先鞭を付けたと思う。XAはそれ以降にたくさん発売されるコンパクトカメラの小型化を先取りした形になった。

 XAはすぐ買った。このカメラは持って歩いて何か人の気持ちをうれしくてたまらないと思わせる魅力をもっていた。小さいという愛玩性を十分以上にもっている。明るい広角レンズをつけている。写した写真は一眼レフの高級機で撮影したものと比べてみても遜色なかった。