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吉江雅祥
(元朝日新聞写真出版部長)

ファインダー
 はじめカメラにはファインダーはついていなかった。レンズのキャップをはずしピントグラスに逆さに映る画像を見てフレーミングし焦点を合わせ、改めてフィルムホルダーをカメラに取り付けて撮影した。

 ハンドカメラが出来てファインダーがカメラにとりつけられた。目の位置を決め、あとは金属枠をファインダーとして使用するようになる。

 戦後10年以上、日本の新聞社でカメラマンがつかったプレスカメラ、スピグラ=スピードグラフィックには光学ファインダーとフレームファインダーの両方がついていたが、カメラマンのほとんどは撮影の時フレームファインダーを使用した。

 フレームファインダーは不正確のように思えるが、慣れてしまうと接眼部に目をあて枠でフレーミングするのは、光学ファインダーをのぞくよりは、はるかに写真が撮りやすった。フレームファインダーの最大の利点は枠の外が見えることだ。

 M型ライカが評判をとったのは、第一にファインダーが明るく正確である優秀性であった。その後、一眼レフ時代が来る。ペンタプリズムを使う一眼レフカメラのファインダーはレンズを交換すればそのレンズの画角がそのまま見えて、素晴らしいファインダーであった。バララックス(視差)を心配する必要がない。

 写る範囲が100%見える一眼レフカメラもあって良いことずくめのようだったが、レンズが暗いときや広角レンズをつけると見にくかった。最大の欠点はシャッターを切る瞬間が見えなくなることと、写る画面の100%見えるはずが瞬間的には60-70%しか見えないことだった。またしっかり眺め回して100%見えたとしても画面の外側はまったく見えないことだ。

 だから私は両目を開けてファインダーを見るなどという人もいたが、慣れた人は肉眼で対象をしっかり見てフレームを予測しそれにカメラのフレームを合わせるという撮り方をした。

 一眼レフカメラは優れた性質を持っていたから、50年以上にわたって一眼レフカメラ時代がつづいた。そうしてデジタルカメラの時代がやってきた。デジタルカメラにははじめは普通の光学式ファインダーがついていたが、そのうちに液晶のモニターがカメラの背面につくようになった。カメラつきケイタイも急激に普及する。写真を撮るときファインダーをのぞかずに液晶モニターを見て写真を撮るようになったきた。

 コンパクトデジカメははじめは光学式ファインダーにプラスして液晶ファインダーをつけていいたが、そのうち光学式ファインダーを省略するカメラが出てきた。液晶モニターも2インチから2.5インチになりやがて3インチ、さらに3.5インチのモニターがつくようになってきた。

 昔から写真を撮っていた人たちは、目をカメラから離し、腕を伸ばしモニターを見て写真を撮影する姿を馬鹿にしていたが、ケイタイを含めてデジタルカメラ世代の若者のにはそのスタイルが当たり前のことになっていった。

 筆者の孫の一人は大学生だが、完全なデジタルカメラ世代だ。液晶モニターの画面を見て写真を撮ることが写真の始まりであった。もう5年以上カメラ付きケイタイとソニーのコンパクトデジタルカメラを愛用している。

 少しクラスが上のレンズ交換式一眼レフカメラを使いたいというので、親からニコンF80を買ってもらった。このカメラで写真を撮り始めたが、一眼レフデジタルカメラは使いにくくてだめだ。液晶モニターがついているのに何故これを見て写真が撮れないのか、これはおかしいと言いだした。

 ファインダーをのぞいて写真を撮れと言うが、ファインダーとして使えないモニターなどナンセンスだそうだ。この世代は腕を伸ばしてモニターを見て写真を撮ることに慣れている。慣れているというよりは、それ以外の方法で写真を撮ったことがないのだ。

 そう言われて、レンズ交換式一眼レフでカメラ背面の液晶モニターがファインダーになるカメラを調べてみると、オリンパスE330があった。昨年の6月に発売になっている。オリンパスはこの機構をライブビューと言っている。

 これまでライブビューなどという言葉は気にも止めないでいたが、孫の意見に驚いてデジタルカメラ世代の若者に会うはしから聞いてみると、レンズ交換が出来る一眼レフを買おうと思ったがライブビューでないのでやめたとか、買ってしまってから液晶モニターをファインダーに使えないことに気がついてがっかりしたなど、びっくりする意見が述べられる。

 不思議なことにこの意見は男子だけだ、若い女性はレンズ交換が出来るから一眼レフスタイルのカメラを欲しいと思っている人がいなかった。

 さてオリンパスE330だが、カタログを見ると、世界初フルタイムライブビュー。一眼レフなのにコンパクトカメラのようなスタイルでフレーミングが出来る。E330はポロミラー式光学ファインダーをベースに受光素子・撮像センサーを二つつけることで背面液晶に画像を常時表示するようにしている。E330の液晶モニターではフルタイム・ライブビューとマクロビューでは拡大してピント合わせが出来ると書いてある。

 一眼レフカメラはミラーを上げなければ画像は撮像素子=受光素子(フィルムカメラで言えばフィルム面に)にレンズの結像は届かない。撮像素子に画像が写らなければ液晶には画像はあらわれない。そう考えるとフレーミング専用の画像素子を別に取り付けるのが一番簡単なことなのだろう。

 オリンパスは今年4月発売予定のデジタル一眼レフE-410と7月発売のE-510の両方にフルタイムライブビュー機構を取り付けると07カメラショーで発表をしている。

 昨年7月発売された松下の一眼レフL1にもライブビューがつけられている。ライカのレンズをつけているが価格が高いのと画素数が700万画素クラスと言うことであまり注目されていないようだ。アマチュア写真家の間では最近は1000万画素超えが、買う買わないの一つの目安(基準)になっているようである。

 キヤノンは5月発売のEOS-1D Mark IIIにライブビュー機構を初めて採用した、3インチの液晶モニターがついていて、ファインダーと液晶モニターを切り替えることができる。先日、全日本写真連盟のあつまりでキヤノンが持ってきて展示しているのを見せてもらった。液晶は画面が大きく見やすい、ただしピントはマニュアルで合わせなければならない。見ていてこのライブビューはスタジオ撮影には具合が良さそうで魅力を感じた。

 フジが今年1月に発売したFinePix S5 Proにはライブビュー機構はついていないと思っていたら最近になって、このカメラにもライブビュー機能がついていると宣伝している。フルタイムではなくミラーアップして画像素子CCDが写し出す画像を液晶モニターに映し出す方式だ、モニターは2.5インチだからキヤノンより小さい。しかしコンパクトデジカメと同じようにピントが確認できるそうである、ただしライブビューは30秒だけとあるがどういう機能か詳しくはわからない。

 デジタル世代の希望を入れてなのでしょう一眼レフカメラにライブビュー機能がだんだん取り入れられていくようである。レンズ交換の利便性をのぞけば無理に一眼レフスタイルにこだわることはない。そうすればライブビューは簡単なことだ。無理にそんな機構をとりこむ必要はないという意見も出てくる。

 ライブビューなど必要のないことと、ファインダーを見て写真を撮れば良いと年輩のアマチュア写真家の大部分はいうようだ。なかにはデジタル一眼レフを使っているが今まで一度も液晶モニターなど見たことがないと言う人もいる。

 筆者はスタジオでの動かないものの撮影や展示物などを撮るのに、ソニーがα100以前に発売したDSC-R1をつかっている。このカメラはソニー独自の開発したカメラでα100のようにコニカミノルタの血は入っていないカメラだ。理由はDSC-R1の液晶モニターがほかに見られない発想で創られていて、フリーなアングルで液晶画面を見ることができるからだ。

写真説明
(1) スピグラのファインダー、枠式のファインダーと光学式ファインダーが見える。
(2) ライブビューで売り出したオリンパスE330のカタログ。 
(3) ライブビュー機構をつけたキヤノンEOS-1D Mark III。