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10月の日曜日

ひさびさにのんびりとした
10月の日曜日……
わたしは草原に寝ころんで
このまちの、いちばん好きな季節を呼吸する
都会を、少し離れたところに横たわる
広々とした公園――
ここにも、たくさんのひとびとが
やすらぎを求めてきている
わたしは、なるべく独りになれる
しかも、ゆったりとした空間をさがして
さがしてさがして、やっとみつけた
なだらかな斜面のてっぺんには
木が一本 天空に向かって伸びている
そして、わたしのまわりには
草が青々と 繁っている
こんなところで、こんなふうに のんびりしていると
このまちに暮らすのも まんざら
悪いことではないような気もしてくる……

……先月のいまごろは、たしかまだ
陽射しがつよく 暑かった
ひと月でこんなに気候もおだやかに 変わるのだから
もう、冬も あの丘の向こう側で
息をひそめて待っているのかも しれない
――そして、わたしは 来月
またひとつ、歳を 重ねる


きょう、あたらしいデパートが……

きょう、あたらしいデパートが
駅前にオープンした
仕事場でもその話題でもちきりだった
仕事帰りの道も、案の定
ふだんより、はるかにはるかにたくさんのひとで
埋めつくされている
みんな、そこに向かうのが当たりまえであるかのような
いかにも確信に満ちた足どりで 歩いていく
駅の構内も、人を待つ人の嵐
初秋の、こころもち肌寒い夕暮れどきも
この一角は、熱気で蒸せかえり
息をするのも苦しいくらいだ
改札口を出てくる 人、人、人、人
その途切れない波にはじかれて
わたしは、しばらく ぼうぜんと立ちすくむ
みんな一目散に歩いていく
向こうの交差点には、すでに
人の行列がつらなっている
そこにいったい、なにがあるというのか――
これもこのまちの、ありふれた光景ではあるけれど
この、情熱はすさまじい――と
あらためておもう
わたしもちょっとは興味はあるが
このひとびとの情熱にはとても勝てない
すくなくとも何日間かは、あの建物は
これら、すさまじい情熱をもったひとびとのためにあって
わたしなどの入り込むすきまもない空間だから
その、情熱の息苦しさが多少なりとも
薄くなってから いってみよう――
そう、おもう


わたしの生き方

光と影のはざまに立ちつくし
ときおり街路樹をさわさわと揺すぶりながら
吹きつける風を心地よく顔に全身に感じながら
まちなかを歩いてみる
ちらちらとわたしの皮膚を刺激する
通りすぎる見知らぬ人たちの視線も
今日はなんだか心地よくさえ感じられて
わたしが、わたしであることをなんのてらいもなく
自然に振舞える時間が空間が好きだ
存在をことさら強調することもなく
わたしには、わたしが輝ける瞬間があり
その緊張感があるのだから
どうして、まちや人に対して ことさら自分を
飾りたてて歩く必要があるだろう
どうして、あの人がいいとかわるいとか ささいな違いに
こだわる必要があるだろう
わたしが、わたし自身を信頼し
それは決してうぬぼれではなく、そんなわたしの全体を
なんのケレン味もなく そのまま受け入れてくれるひとに
わたしは、わたしのできるだけのことを与え
そうすることで そのひとのやさしさに
せめて 報いてあげられたら――とおもう
それが、わたしの生き方


MODEL: Wang Ying
Stylist & Hair Make up: Noriko Sasaki