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●モノクロ写真
 真っ白から真っ黒まで、中間のさまざまな濃さのグレーを含む調子だけで画像を作った写真。日本語ではもともと「黒白写真」と言ったけど、「白黒写真」とも言う。モノクロっていうのはフランス語の「モノクローム(単色)」の日本的な略語。英語ではブラック・アンド・ホワイト、略してB&Wとも言うんだ。写真が発明された18世紀には写真はすべてモノクロで、本格的なカラーフィルムが作られたのは20世紀になってからだ。だから、昔は写真と言えばモノクロが当たり前だったし、日本でも戦後しばらくの写真ブームのときまでモノクロだった。いま、またモノクロ写真が若い世代を中心に流行っているのは、子どものころからカラー画像が当たり前で、モノクロ写真を知らない、というのがひとつの要因。モノクロ写真は白と黒、それと中間のグレーだけで表現をするわけだから、写真に写っている被写体の本来の色はまったくわからない。写真を見る人間の想像力に訴えるわけで、だからこそモノクロ写真にふたたび人気が集まってきたとも言えるね。モノクロ写真は色がないだけに、調子が非常に重要で、白から黒までなだらかにグレーが変化していくような画像が理想的だ。これを「諧調が豊か」とか「トーンが豊富」というけど、それにはフィルム現像からプリント引き伸ばしまで注意深い作業が必要になる。現像がオーバーだと中間のグレーの調子が悪くなって、白と黒の強調された写真になってしまう。逆に、現像がアンダーだと、グレーばかりの調子になってしまい、白の冴えや黒の締まりがなくなってしまう。


写真1 モノクロ写真はトーン(調子)がいちばん重要だ。黒は黒く、白は白く、そして中間のグレーが豊富でなければならないんだ。


写真2 モノクロ写真は被写体のもともとの色がわからないから、見る人間の想像力に訴えることができる。これもモノクロ写真の醍醐味なんだね。



●明暗比
 これはちょっと専門的な写真用語だけど、それほどむずかしいわけじゃない。被写体の中で、いちばん明るい部分(ハイライトって言う)といちばん暗い部分(シャドーって言う)の明るさの比率のことだ。ふつうカラー写真で再現できる明暗比は1対32と言われている。つまり、暗い部分より32倍明るい部分まで再現できるわけで、それ以上になると、本来の調子が再現されない。つまり、明るい部分は白っぽくなってしまい、ディテール(細部)が画像として見えなくなってしまうんだ。逆に、暗い部分は黒っぽくなってしまって、やはりディテールがわからなくなってしまう。明るい部分が白っぽくなって細部がわからなくなってしまうのを「飛ぶ」、暗い部分が黒っぽくなって見えなくなってしまうのを「つぶれる」と言う。だから、写真を撮る場合には、この明暗比が1対32(露出の幅でいうと5EV)内に入るような被写体を探さないと、すべての調子が再現されないことになる。非常に明るい日中の部分と、日陰になっている部分がひとつの画面に入ってしまう場合には、あらかじめ露出計で露出の差を測ったほうがいい。それが5EV以内であれば、明暗比は適切ということになる。


写真3 早朝の高原だけど、明るい部分と暗い部分の差、つまり明暗比がそれほど大きくなかったんで、明るい部分も暗い部分も両方とも画像として再現されてるね。


写真4 これは明暗比が大きすぎて、明るい部分が再現されなかった例。バックの白壁や日の当たった柳と、日陰になった部分の露出の差が5EV以上あったので、明るい部分の調子が飛んでしまったんだ。