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 長く広告写真や女性ポートレイトの世界で活躍され、最近も和紙などに乳剤を塗って写真をプリントされた作品を発表されたりとご活躍の藤井秀樹先生。40年近くにわたる先生の「写真人生」を熱く語っていただきます。

編集部(以下 編):今日はいよいよ最終回。先生の今と、これからの作品制作についておうかがいしたいのですが。
藤井秀樹先生(以下 藤):前号ではデジタル映像の話をしましたが、今後は、アナログかデジタルかということがもっともっと話題になってくるでしょうし、デジタル映像というものが新しい写真表現に重要な役割を果たすようになるでしょう。
 今回の作例一点目は、以前手書きをしていたボディメークに、デジタルでダリアの花をアレンジしたものです。手書きではできない、立体的な表現ができたと思います。平面から3Dへ、といったことも可能になってくるでしょう。これは、新しい方向性のひとつとして、制作を続けていこうと考えています。
 また、その反面として、デジタルで制作した映像をFグラに取り入れて、和紙などの様々な面白い素材にプリントしてみたいと考えています。
 たまたま福井県が、和紙に乳剤を塗って写真を焼くということに興味を持ち、助成金を出してくれましたので、和紙に乳剤を塗る機械が出来ました。今年の秋に商品化されるかも知れません。(編集部注・福井県は和紙の産地です)
 作例二点目は、和紙に焼いた「一花一葉」という野草をテーマにしたシリーズで、ポストカードなどに印刷されて販売されています。
編:アナログとデジタルの見事な融合ですね。では次に、今後の活動についてお聞かせ下さい。
藤:次にテーマにしているのは、金箔に野生蘭を焼く、ということで、マレーシア、ボルネオのジャングルに通っています。
 2月にマレーシアに行った時に、福島さんとおっしゃる、元日本航空の支店長をされていた方にお会いしました。そこで、彼の栽培する寄生蘭を見て、ショックを受けました。自然の持つ美しさに感動して、次のテーマに決めました。これは、デジタルも取り入れて、新しい写真表現としてまとめようと考えています。また、金箔銀箔という、まだ誰も焼き付けたことのない素材に焼いて、雅の世界に挑戦したいと考えています。
編:早く作品を見てみたいです。
藤:蘭には、人工的に交配させて作り出してきたものと、密林に咲く原生蘭と二通りあるんです。原生蘭は、すごく小さいものです。温度、湿度、また、高山植物みたいなところもあって、採ってくることもできません。こちらから会いに行くしかないんです。
編:時間がかかりそうですね。
藤:幸いなことに、マレーシアの前林野庁長官が全面的にバックアップしていただけることになりましたし、何十年も原生蘭を追っている方とも知り合えたので、少しは取材も楽になるでしょう。いきなり行って闇雲に望遠鏡をのぞいても見えるものじゃありませんからね。
 また、マーシア在住の福島さんが30年もかかって交配してつくりあげていった蘭が本当に素晴らしく、ちゃんと写真を撮ったことがない、ということで、それも撮ることになりました。200種類もあるんですが、福島さんは高齢で、世話する人がいなくなって、枯れてしまってはもったいないですからね。
 マレーシアに足繁く通い、原生林を歩き、また、福島さんのコレクションを撮影し、と、相当かかるでしょうね。
 もともと蘭には全然興味がなかったのですが、巡り合わせというか、今年の2月に東京ガスさんの依頼で、マレーシアで蘭の撮影をし、その時に福島さんと出会い、マレーシアの前林野庁長官と出会い、つっこめばつっこむ程面白く、ここ4、5年は蘭狂いすることになりそうです。(笑)
 また、熱帯雨林に入ってみて、その面白さというか、そこを作品制作の場として、新作も計画中です。
 これ以上しゃべるとみんなバレてしまうので、この辺でやめておきます。(笑)
編:作品の発表が待ち遠しいです。
藤:でも時間がかかるんだよね。ジープで何時間もジャングルを走ったり、船に乗ったり、苦労して行ってみたら咲いてなかったりしてね。(笑)
編:日本で見られる蘭とは違うんでしょうね。
藤:それは見事なもので、感動しますよ。原生蘭を撮った写真家はそうはいないんじゃないかな。大自然が作ったアートですね。お花の先生でもかないませんよ。
編:先生の精力的な活動は、若い写真家への刺激、写真界への刺激です。この一年、様々なお話をお伺い出来たことは、IPMJだけでなく、写真界の貴重な財産として、永く留めたいと思います。本当にありがとうござました。益々のご活躍を期待しております。