フォトルポ

上海雑記

上田裕一



No.7に掲載されました


 昔、掛け軸と硯の町といわれた上海。

 そこは、香港と見間違うほど活気にあふれた街だ。売場面積が池袋東武を上回るヤオハンのデパートなど、いたる所で建設ラッシュとなっている。
 旧租界地には、外資系の銀行が入り、中国金融の中心となっている。週末の夜は、アール・デコ調の建物がライトアップされて夜景が美しい。
 和平飯店(北楼)のジャズバーでスコッチウイスキーのグラスを傾けていると、まさに上海バンスキングの世界に浸れる。

 目の前の黄浦江沿いにある公園は、開放前「犬と中国人入るべからず」の表示があったところで、朝は老人の太極拳、夜はアベックでいっぱいだ。
 名物の上海雑技を演ずる上海商城劇院は、オペラやバレエもできるすばらしい劇場。
 南京路などの繁華街をはずれると、そこは、日本の昭和30年代のくらしが営まれている。

 蘇州は上海から列車で1時間半。漢字の蘇という字は、くさかんむりに魚と禾(のぎ)と書くところからも、水との関係がうかがえる。東洋のベニスと言われるとのことだが、市内からはあまり感じとれない。郊外へ行かないと、言われているような風景には出会わないようだ。
 漢詩で有名な寒山寺には、農村の婦人たちが団体でお参りにやって来る。今は五重塔の建て替えのため、高僧が目の前で好きな言葉を書いて掛け軸にしてくれる(1万5千円)のがおもしろい。
 残念なことに、11月に訪れたときには、脳卒中で倒れたとのことで一時中止していた。
 蘇州のシルク刺繍研究所では、中国人モデルによるファッションショーも見られて、目の保養にもなる。

 旅の楽しみである上海料理は、さっぱりしていて日本人の口に合う。最高級の紹興酒(花彫酒)がわずか20元(約200円)と安いのもうれしい。また訪れたい街だ。

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